ブリタニアは島国から始まった。世界の2/3を支配し、首都は大陸に移ったが古き地は帝国ゆえに混血の進んだ今となっては神聖視されるところではない。

新しくエリアとなった場所のほうが管理され、快適に過ごせるところもあるからだ。

だが、忘れ去られた地でもなく、荒んだにおいはしない。

ルルーシュが住居をここに決めたのも血に流れる懐かしさがあったからかも知れない。



いま、ルルーシュは幾人かの同居人と暮らしている。

一人目は、ルルーシュの命よりも大事な妹ナナリー。

彼女は未だに目もみえず、足も動かせないが、その優しさは変わらずルルーシュを癒してくれる。

二人目はまたもや押しかけてきたC.C.。

契約は果たされていないといつものように横柄にいい、ルルーシュの部屋を分捕っていった。肩を撃たれたりルルーシュと親密そうだったりスザクは対抗心を燃やしているようだが、他はC.C.がそういう性格だと割り切っているようだった。

三人目はカレン。彼女も日本に戻らず、ついてくることを決めたようだ。今は色々アルバイトを掛け持ちしながら料理の勉強もし始めたようだ。ナナリーの特訓の成果もあってこのごろでは焦げた料理は出てこなくなった。

そして、最後の同居人。スザク。

スザクは特派に強制送還されることを嫌がり、軍を除隊した扱いになっている。あの当時のスザクを思うと本当はもっと無理を通したのだろうが、探されることなくブリタニアから縁を切れているのだ。それでよしとしている。後で聞いた話だが、どうやらコーネリアから特派やシュナイゼルに要請があったそうだ。

部屋を追い出されたルルーシュを一緒にシェアして良いと受け入れてくれた。むしろ歓迎した。

困ったことに、スザクはルルーシュを抱きしめて寝るのが癖になっていたようだ。そして、ルルーシュも拒むことが出来ない。



二人の仲を周囲は見守る方向にしたようだ。これから、生きるのも一緒、死ぬときも一緒の仲間なのだ。仲良くやっていくに越したこはない。



かつてルルーシュの希望は二つあったが、ひとつは隠れながらも穏やかにすごせるこの場所さえあれば良いと、ナナリー自身に言われてしまった。

そして、もうひとつ。ルルーシュ自身が兄弟を手にかけてまで知りたかったマリアンヌ暗殺の真実はいまだ解けていない。C.C.はやはりだんまりを通している。ルルーシュとナナリーのギアスが暴走する可能性もある。深追いしたくても、同居人が反対してそれについては結託しているようだった。一人傍観者なものもいたが、ルルーシュの味方にはなりえない。



気だるげな午後、ナナリーが少し高度な治療が受けられそうだと気が緩んだときだった。

カレンが爆弾発言をした。

「そういえば、ミレイに引っ越してから連絡入れてなかったじゃない。この前落ち着き先が決まったから生存だけは知らせておこうって連絡取ったら・・・押し切られたわ。今度遊びに来るって」

「おい、俺たちが逃亡者という自覚はあるのか?」

ルルーシュが怒ったようにカレンを詰め寄るとナナリーが止める。

「お兄様、ミレイさんなら、大丈夫ですよ」

確信を持ったようにカレンをかばうが、スザクも不安げだ。

「でも、会長さんは特派のロイドさんの婚約者だよ」

「大丈夫です、いざとなったらスザクさんをランスロットのパイロットに差し出すから黙っておいてほしいとお願いすればいいんですよ」

にっこりとナナリーは笑った。そうね、確か機械フェチだって話しだしとカレンも納得する。

「ほう、人身御供か。せいぜいがんばれ」

C.C.も人の悪い顔でわらった。スザクは救いの手をルルーシュに伸ばす。

「スザク、お前は相変わらずばかだな、真に受けるな。それに、確かに、ミレイなら下手を打つことはないな」

それで納得したのか読書に戻ってしまう。



「でも、会長さんたちにはナナリーと分かれてしまってルルーシュの記憶が飛んだって説明しているんだよ、今はナナリーも一緒にいるし、・・・」

「粗の大きい説明だな。よくそれで納得したな」

ルルーシュが力なく頭をたれるスザクに返す。

「うん、ルルーシュのシスコンは皆知っていたからね」

「・・・・おいっ」

ルルーシュは本をソファーにおきスザクに反論しようとする。

「本当、子供の頃から変わっていないけど、妬けちゃう位だよね」

空気を読まない男は健在だった。ナナリーはそっと予想されるこれからの展開に小さく笑った。

「お、お前など、特派でも何でもいってしまえ!」

置いてあった本をスザクに投げつけるが、スザクは余裕で受け止めてしまう。



カレンはため息をつき痴話げんかなんか見てられないと新作のケーキ作りでもすることにした。C.C.がナナリーの車椅子を押して部屋を出てくる。

「教育上よくないからな」

ぼそりとつぶやいた言葉にカレンは笑った。