「ブリタニア皇室、第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアだ」

堂々と、名を名乗ってくる相手にカレンは家の中に入れざるを得なかった。

もちろん、ルルーシュは奥の部屋に閉じ込めている。スザクには急いでメールしたが、軍務中に見ることもないだろう。

おとなしい、病弱な振りをしてそっとコーネリアを迎えたカレンはスザクが帰るまで居座るつもりのコーネリアを追い出すことも出来ず、培った大きな猫をかぶってコーネリアを相手取る。



(スザクのやつ、こっちに来るなんて行ってなかったじゃない)



コーネリアもカレンを監視するように見つめる。

貴族然とした、振る舞いもしっかりしている。喫茶店の住人が話していたよう病弱なのか表情もおっとりと動作ものんびりだ。

しかし、コーネリアには不自然な存在だった。

ユーフェミアは信じたくないが枢木に好意を持っていた。確かに、学校へいけと手配したのはユーフェミアだったが。



しばらく、カレンの手による紅茶の饗応をうけ、コーネリアは本題をぶつけた。

「カレン・シュッタトフェルト、アッシュフォードで生徒会の一員、そして、わが妹が認めた枢木の恋人、町で流れている噂だが、訂正するところはあるか?」

カレンはユーフェミアのスザクへの態度を神根島の時あったことがあるので、皇族に偽証を認めるわけにはいかない。噂であって否定していないだけと語っても疑惑はのこるだろう。

生徒会のメンバーにはルルーシュの存在ゆえにと納得してもらえたが、カレンにとってルルーシュはゼロである。皇族にその存在を知られるわけには行かない。ルルーシュの存在なしにこの状況を釈明することは難しい。しかし、ルルーシュの存在を外に出すつもりはない。

カレンはルルーシュが元皇子であること、コーネリアにゼロの正体がルルーシュであると知られていると知っていたわけではない。



うつむいて、考え出した結果はやはり苦しいがスザクの恋人と名乗ることだろう。いや、否定するべきか?しかし、コーネリアの促すような視線にカレンはしっかりと見つめ返す。



「私はカレン・シュタットフェルトです。アッシュフォード学園で生徒会に入っていたことも事実です。けれど、ユーフェミア様にお会いしたことはありません。学園祭にいらっしゃったり、遠目に拝見したことはありますが」



少し、気弱なお嬢様から外れる態度だが、仕方ない。強く返される視線に興味深くコーネリアは口端を上げた。

「ほお、しかし、私が聞きたいのはそこではない、お前が枢木の恋人なのかと言う点だ。アイツはユフィを裏切っていたのかということだ」

カレンは、心の中でスザクをののしりながら、一世一代の名演技を目指す。

「裏切り・・・裏切りとは?私は、確かに枢木スザクと心身ともに恋人と言う関係ではないです。

けれどこの今の状況も、ユーフェミア様のためです」

「?ユフィの?」

コーネリアは疑問を隠さずつづきを促した。

「ユフィのためとはどういうことだ?」



カレンは一度うつむいて、もう一度呼吸を整える。



「他の街でのユーフェミア様の噂はご存知でしょう。ユーフェミア様を愛するこの地では、身分低い男に血迷った挙句騎士にしたなどという噂や、またユーフェミア様の最期の行動も到底信じられるものではなかったんです。・・・確かに。私は体が弱くて、本国に帰るの彼の協力を得ました。けれど、誤解をしてユーフェミア様は私たちを祝福しているんだと言い始めたのは彼らです。人は信じたいことを信じるものですから。私も、彼も誤解だと否定するのは・・・」



そこで、言葉を切り口をつぐんだ。

コーネリアは確かにと、ユーフェミアの世間とここの街での感情の差を思い返す。



「・・・ユフィの名誉を守るためか」







スザクがようやく特派の面々とシュナイゼルから開放されたのはだいぶ遅くなっていた。一度、連絡を入れ損ねてから、カレンとルルーシュから必ず、連絡はするよう約束させられた。

まず、最初に携帯の電源を入れて、落ち込む。

(一難さって、また一難)

コーネリアが家を訪問していると知って、急いで帰宅した。

(今度こそ、ルルーシュおとなしくしていてよ)