ミレイはスザクに会いに来ようとしたときの決意を思い出す。何かの決着をつけるためにここにきたのだ。カレンに、欠けてしまったメンバーの一人に会えるなら望むところだ。

もし、それでカレンと決定的に決別しても、あのまま何も話すことなく中途半端になるよりはいいと思った。

リヴァルやシャーリーはスザクがだまされているんじゃないかと思っているようだが、ミレイの考えは違う。もしかしたらだが、スザクは黒の騎士団が学園を襲うずっと前から、カレンが黒の騎士団にかかわっていると知っていたのではないだろうか。スザクは天然で、人当たりもいい。けれどある一定の人には観察するような値踏みするような視線を当てているときがあった。

それはカレンにも当てはまる。ただ、この予想が当たると、ミレイにとって考えたくない人物もスザクは疑っていたのではないかとたどり着いてしまう。



一度たどった道を戻って、スザクの家を前にした。

ピンポーン

インターホンを押すが、答えはない。しかしここであきらめてしまうわけには行かない。



「会長」

ミレイの強運のおかげか、スザクの家に近づいてくるカレンが戻ってくるところだった。とおりの真ん中でカレンは立ち尽くした。ミレイの存在に驚いているようだ。

「はぁい、ひさしぶり」

ミレイは笑顔で挨拶をするが、カレンの表情はこわばったままだ。

「・・・何のようですか?アタシのことブリタニアに、」

にらみつけるようなカレンの視線にミレイはさらに笑みを深めた。カレンはアッシュフォードでは偽りの姿だったが、ミレイにはカレンの出生の秘密もしっていた。あの時、無理をしないよう伝えたことは偽りではない。そして、どちらかというと、アッシュフォードで見せられていた、よそよそしいカレンの姿より、今の睨み付けてでも心をさらけ出しているカレンのほうがミレイにとっては好ましい。

「前にも言ったと思うけど、私は誰かに秘密を言うつもりはないわ。カレンが無事に生きていてくれたことが嬉しいのよ。それにカレン、あなたは私たちのこと結構好きだったでしょ。あの時もみんなが怪我しないように気をつかってくれていたもの」

ミレイの言葉にまだ警戒は解いていないようだが、少し心は動いたのか、カレンの表情は今度は罪悪感のほうが浮かぶ。

「じゃあ、何しにきたの?」

「だから、会いによ!それだけ」

そっと近づいて、カレンの肩に手を置く。びくっとカレンは肩を動かしたが、ミレイの手はふり払えない。

「本当に、生きていてくれてよかった。騎士団が壊滅したって聞いていたからもう会えないかなって思ってた。本当は今日スザクに会いに来たんだけど、街であなたの事聞いて、・・・ねえ、スザクもあなたのこと知っていたんでしょ」

ミレイはカレンに会えたことで気を取られ、近づいてくる足音に気づかなかった。

先に玄関からひょっこり顔をのぞかせるルルーシュの姿に気づいたカレンはミレイを今度こそ振り払い、玄関に向かう。

しかし、ミレイも振り返って、気づいてしまった。

「ルル!」

ミレイのほうがカレンよりも玄関に近いことが幸いしてミレイはルルーシュに抱きついた。

「ルル、ルルちゃんっ」

ぎゅっと抱きつかれたルルーシュは困惑顔だ。ミレイの瞳からは静かに涙が流れる。カレンはこうなったら仕方ないと、ミレイも含めてスザクの家に入り、扉を閉ざす。



「うっ・・うっ、っルルちゃん、生きてた。よかった、よぉかったぁ」

泣きながらもルルーシュを離さないミレイにカレンはようやく声をかけた。

「会長、ルルーシュも困ってますから」

「ん、ごめん。ルルちゃん」

ミレイがルルーシュの顔の輪郭をたどるようになでて、体をはなす。

「眼、怪我してしまったの?」

左目を覆う眼帯もそっとなでた。ルルーシュは突然のことに驚いていたが、ルルーシュにも不思議だったがミレイの手はいやな感じはなく、どこか懐かしい感じがした。

「会長?何かの会長だったんですか?もしかして、カレンと同じクラブだったとか?」

ルルーシュの言葉にへ?とミレイの思考がとまる。

「な、何言ってるのよ、ルルーシュ!私たちはアッシュフォード学園の生徒会執行部でしょう!」

「・・・生徒会?、すみません覚えがない」

ルルーシュは何か覚えていないか残り少ない記憶をあさったがやはり生徒会という単語は出てこない。横からカレンが思わず口を出す。

「会長、ルルーシュは昔のこと覚えていなんです。だからっ」

その後どう続ければいいかカレンにも分からず、口ごもる。ルルーシュもどうやら昔の知り合いらしき人にスザクとカレン以外ではじめてあって勝手が分からない。



「アタシから全部はなすわけにはいかないのでスザクが帰ってきたら話す、ということでいいですか」

それから簡単にミレイの自己紹介をしてスザクを待つことに合意してもらった。