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「スザクは軍部で仕事みたい。軍で待つわけには行かないし、先に家に行って待たせてもらいましょう」

ロイドからまわされたスザクの家までの地図をみんなの携帯に転送する。

一緒に来たのはリヴァルとシャーリーだ。ニーナは最後まで迷っていたがまだイレブンにいたときの心の傷が深くて、あこがれていたユーフェミアを守れなかったスザクに何を言えばいいのかわからないと今回は同行しなかった。

「随分高級住宅街のなかにあるんですね」

シャーリーは地図を見ながら、感心したようにいった。

「亡くなったとはいえ、第三皇女殿下の騎士だったからね。それなりは、あるんじゃないの」

「ユーフェミア様、ゼロに殺されたんですよね」

昔のことがよみがえってくる。3人は沈痛な表情になった。

「・・あのっ、ゼロって、本当は」

シャーリーが思い切ったように話し出すが、そっと肩に手を置いて首を横に振る。

「この国でその名前を話すものではないわ。結局つかまっていないんだしね」

「そうそ、騎士団は壊滅になったけどね」

リヴァルはことさら明るくしようとつなげる。

「さあ、とにかく今回の目的はスザクに会うことよ。行きましょう」



3人が家にたどり着いてインターホンを押しても応答はなかった。

「使用人を一人くらいやとっていると思ったんだけど」

「会長〜スザク君ですよ〜」

「そうですよぉ、一般の家庭は使用人はいないって」

シャーリーとリヴァルはミレイのボケに突っ込む。

「シャラーップ!!」

ミレイの大きな声にとおりを行く人がびっくりと足をとめた。

「順番を変えましょ、最初に観光してまた後で来ればいいのよ」

きびすを返そうとするミレイに「あの〜」と声をかける人がいた。

「はい?」

振り返るとさっきの通行人だった。

「クルルギさんの家、今留守だと思いますよ。婚約者のカレンさんもさっき街のほうで見ましたから」

世間話のように3人に爆弾を投下された。

「え?」

「はい?」

「えええぇぇ!!」

3人は通行人の前まで走りより問い詰める。

「婚約って」

「カレンって、あの」

「一緒に暮らしているのぉ?」

同時に話し出されたのでわからなかったが、この町の美談で通っているクルルギ・スザクと、カレン・シュタットフェルト、そして二人を応援していたユーフェミアの話を得意げに話す。

3人は途中から微妙な顔をしていたが最後まで話しを聞いてその人から別れた。

「なあ、会長・・」

「わかっている」

リヴァルの言葉を制して、とりあえず、落ち着けるところまで行こうと移動した。



整理しましょと喫茶店にはいってから、3人は頭を付き合わせた。

「あの日、カレンは黒の騎士団の一員だった。間違いないわよね」

「ああ、あの場所にいたのは俺たちと、ニーナと、ナナリーだった。ほかは騎士団のやつらだった」

「スザク君は知らなかったの?」

沈黙が落ちる。

「そうだったら、許せないぜ。友達だと思っていたのにあいつは俺たちを裏切っていたんだから」

リヴァルのこぶしが握られる。

「ロイドさんにきいてみるわ」

ミレイが携帯を握り締めて、席をたつ。リヴァルはズズーッとジュースをすすった。シャーリーも不安げに外で話しているミレイを見守る。

「おまたせ。わかったことはね。カレンは黒の騎士団の一人だったと軍では知られていないようね。」

さっと、本題をはなす。

「スザクに会いに行こう。軍でも呼び出しとかは出来ると思う」

リヴァルが二人を交互に見る。シャーリーはうなずいたが、ミレイはうーんと悩んだ。

「別行動にしましょ。私は先にカレンに会いに行くわ。もう戻っているだろうし」

陽も斜めになってきているのを見て、言った。

「危ないですよ、どんなことされるかわかんないし」

リヴァルが一緒にスザクのほうに行こうと呼びかける。

「あの時も、危害を加えようとかしなかったわ。大丈夫よ」

結局ミレイの言葉は翻らず、3人は二手に分かれた。