_____


一方、ルルーシュは自室であるクラブハウスの一室にいた。
突然携帯に発信音が鳴る。
「・・クロヴィスか?」
何度も放送で呼び出されることが嫌になったルルーシュは、学園内の敷地にクロヴィスが入ると自分の携帯に発信で連絡されるように設定していた。
しかし、昨日のクロヴィスの話しでは、今日は確かユフィが来ることになっていると聞いたのだ。さすがにこないと思っていたのだが、もう夕方だ。彼女も帰った後なのかもしれない。
用心して、クラブハウスにこもっていたが、放送で呼び出される前に応接室に向かおうと部屋を出ようとした。

その時、メールの着信音がなる。
「?」
慣れた動作で、画面を開いて驚く。
「きけん。」
差し人はクロヴィスのもの。
そして内容は一言。
ルルーシュは、すぐさま一階に向かった。

「ナナリー!」
今日は休むようにといっていたから、一階のリビングにいるだろうと部屋に入ったが、そこにいたのは咲世子さん一人だった。
「・・ルルーシュ様?」
部屋の片づけをしていた彼女はルルーシュの珍しくあわてた様子にびっくりしている。
「咲世子さん、ナナリーは?」
「・・ああ。先ほど生徒会の方がいらっしゃって、一緒に生徒会室に向かわれましたよ」
いつもと変わらない、行動にさほど不信感も感じなかったらしい。

(今日は部屋にいろって言ったのに・・)
そう思ってしまうが、ルルーシュは咲世子さんに礼を言って駆け出した。

ルルーシュがかけて行くのはとても珍しい行動だが、ことナナリーのことになるとあまり意外でもない。咲世子さんはくすりと微笑むと、掃除を再開するのだった。

生徒会室まで、息を切らせながら走ってきたルルーシュはちょうど部屋を出てきたリヴァルと廊下で遭遇した。

「あ!・・ルルーシュ」
なんだか、都合が悪そうな顔をするリヴァルに不審を感じるが、今はそれどころではない。

「リヴァル!ナナリーは?」
この部屋にいるんだろう、と続けようとしたルルーシュにリヴァルが、さりげなくドアの前に立つ。
「ナナリー?・・ああ!!ナナリーなら、さっき応接室に向かったぜ。」
あわてていたルルーシュは、中を必死で隠そうとしているリヴァルの真意を気づけずに言葉をそのまま受け取った。
「そうか。わかった」
言って、応接室に向かって走っていってしまう。

それを見送ったリヴァルは、ほうっと胸をなでおろした。今この自分が背にしている扉の中ではナナリーも交えルルーシュのロケットの件で話し合っているのだ。悪戯は、実行日までばれる訳にはいかなかった。
リヴァルは、自分がたまたま廊下に出てきていてよかったと思いつつ、ルルーシュが見えなくなったことを確認すると、生徒会室の扉の中に再度入った。

「なあ、ナナリー。ルルーシュが探してたぜ」
一応、ルルーシュのことも気遣って言うと、ナナリーは廊下の外の会話が聞こえていたのか、うなずいた。
「じゃあ、私もこれから応接室に向かいますね」
「ごめんな」
リヴァルが、軽く謝る。
「いえ。私もお兄様の言いつけを破ってしまいましたし・・」
助かりました、といたずらっ子のように微笑むナナリーに、その場にいたシャーリーも同意した。
「ナナちゃんは悪くないわよ。外出禁止令なんて単に、ルルの横暴だと思うわよ」
一緒に悪いことをしているためか結託は強いのであった。

と、そこへ。

「あ!ナナちゃんいた!良かった」
急遽理事長に呼び出されていたミレイが、生徒会室に帰ってきた。
「会長、おかえりなさい」
「ね!ルルーシュは?」

みなが迎え入れるより早く、幾分切羽詰ったかのようにミレイが聞く。

「え・・ルルーシュなら、さっき応接室に向かって走っていきましたよ」
会長のあわてた様子に、リヴァルが告げる。

「・・なんてこと」
ミレイは小さくつぶやいたが、耳の良いナナリーには十分に聞こえる声だった。

「あの!・・お兄様に何か?」
ナナリーが聞くと、ミレイはごくりとのどを鳴らした。

「・・いまお爺様から聞いたばかりなんだけど、いつもの応接室に今日はあの方以外がいらしてるって・・」
ミレイの言葉に、ナナリーは驚いて、しかしすぐに行動に移った。

「私も応接室へ行ってみます」
そういって、車椅子を移動する。
「あ、まって。ナナちゃん、私もいくわ」
ナナリーの行動に、ミレイもはっと気がつき後に続こうとした。
「ミレイさん、できたら放送を使ってください」
そこをナナリーが一瞬押しとどめる。

「了解」
一瞬で言われたことを理解したミレイは生徒会室の隅にある、全校への放送用マイクをつかんだ。

「生徒会より緊急連絡っっ!!!全部活はいったん部活動を休止して、現在特別棟に向け廊下を走っているわれらが副会長を捕まえること!!彼を捕まえた部活には予算を優遇しますっ!!以上健闘を祈るっ!」

いつもより早口でまくし立てて放送を切ると、ミレイはナナリーの後に続いて走り出した。
「え?いったい何がどうなってるの?」
部屋にいたリヴァルとシャーリーもついてこようとしたが、ミレイが止める。
「二人はここにいてっ。もし、ルルーシュがつかまったか、自ら帰ってきたら、こっちはどうにかするからクラブハウスに帰っていてと伝えてね。よろしく!」
有無を言わさない迫力に二人は、好奇心もあったが、ただうなずいたのだった。

(おねがい。早まらないでよ)
ミレイは走りながら願ったが、その願いむなしく、まさにちょうどその時ルルーシュは応接室の扉の横にある端末から専用コードを入力して勢いよく扉を開けたところだった。

「ナナリー!」

普段のルルーシュならば、まず中に誰かいるか確認して・・ということをしたはずだ。
そして、ミレイのわざと名前を出さない放送のメッセージにも気がついたかもしれない。

しかし、もう部屋は目の前だったのだ。
考えている余裕がなかった。

「・・ルルーシュ?」

しかし、部屋の中にいたのは予想外の人物たちだった。