魔法のランプ2.


職探しを始めてから1週間。スザクは、いい加減ナナリーも安心するような安定した職を探さないとな・・と
思いつつ、なかなかいい職を見つけられないでいた。
公園の広場の噴水を背に座り込んでまち行く人を見る。
この国の人口の単純構造は、皇族、貴族、平民、ナンバーズのきれいな三角形。
ナンバーズというのは属領の血を持つ者。スザクは、そのナンバーズだった。
はるか昔には違う名前であった国がブリタニアの属国になったときに与えられた名。
それがイレブンという名だった。11番目に属領になった国という意味だ。
ブリタニアの中では、それは差別ではなく、区別という言葉でれっきとした身分制度のうちに組み込まれている。
(せめてエイトかファイブだったら・・)
同じ属領国出身といっても、顔立ちが似ている国の者はブリタニア人に混じるのも楽なのだろうが、
スザクの顔立ちや身体的特徴は明らかにブリタニア人とは違っている。
(それとも、父さんみたいに騎士候とかになってたら違ってたかな)
騎士候とは、世襲を伴わない、一代限りの貴族。主に軍などで功績を挙げた者がもらうことが出来る。
もちろん一握りの幸運な者が、だ。
スザクの父親であるゲンブは、サクラダイトの利権に関してブリタニアに有益な情報を与えたと言う理由だったか。
政治家であった父のような手はスザクには使えない手だ。皇族や貴族とのパイプも無い。
(軍に入るって言うのも一つの手だけど、なるべくならナナリーを一人にしなくてもいいものがいいよな)
軍人という選択肢は、体力もあるスザクにはあっているかもしれないが、なにしろ毎日家から通うと言う事は
できなくなってしまう。それでは、意味が無いのだ。
「おい、お前」
ついぼんやりしてしまっていたスザクは前に人が立っていることにしばらく気が付かなかった。
「僕?」
「そうだ、お前だ」
みた事も無い女の子だった。緑色の髪が一房、黒いずきんの中から流れ出ている。白い肌はブリタニアのもの。
少しだけ怒っているかのような表情はスザクが無視をし続けていたからだろうか?
「君は?」
ようやく、口をきいたスザクにその女の子は、スザクの問いには答えずに言う。
「お前は運命をつかむことが出来るか?」
(運命??)
突然言われた事に何を言われているのか一瞬分からなかったが、これはもしかして怪しげな勧誘なのだろうか、と
スザクは結論付ける。
「すみませんが・・」
無難に断ろうとしたところで、少女が手を差し出てとめる。
「もちろん強制するつもりはない」
「??」
「何を選ぶのかはお前の自由だ。」
「あの・・いっている意味がよく分からないんですけど」
あまりにも一方的に喋られたので、スザクも少しだけ困りながらもぞんざいに言うと、女の子は初めて笑った。
「選択によっては、ナナリーにとって優しい結果が得られるだろう」
(・・・・!)
見知らぬ人から突然告げられるナナリーの名に警戒すると、少女はスザクに一つの古いランプを押し付ける。
呆然と、受け取ってしまったものをみてから、スザクはもう一度少女を見る。
「君は一体?ナナリーの何?」
「私はC.C. ただの魔女だ」
名前らしからぬ記号、と魔女と言う不吉な言葉。
「魔女って・・」
昨日、ナナリーに聞かせてあげた白雪姫のような話で悪役として出てくる存在だ。そんな存在だと
自ら名乗る少女に不信感を覚える。
「その名の通りだ」
C.C.は、無表情のまま告げる。
「君はナナリーの過去の事・・・」
知っているのか、そう聞こうとしたのにスザクは奇妙な感覚を感じたかと思って一瞬言葉を失った。
「・・・・・・」
今まさに話していたはずの人物が目の前からいなくなっていた。
(・・夢?)
白昼堂々、幻を見たのだろうか。
そう思ってしまうほど鮮やかに、少女の存在が消えている。
しかし。
スザクは、自分の手が持っているそれを見た。
古ぼけたランプ。
確かにさっきの少女が実在したのだと存在付けるかのように、そのランプはひんやりとした感触をスザクの手に伝えていた。


〜続〜


次はルルでます。魔人ルルです。