23話より・・・


用意された私室の薄暗い仮眠室で、ルルーシュは背中に感じるC.C.の暖かさと重みを
感じながら、ナナリーとの別離に決意を固めた。
「もう、ナナリーだけを特別扱いにはできない・・」
心がもう一度壊れるかのように痛いのに、C.C.は見守るだけだ。
ただ、背中に感じる暖かさは無言の優しさを与えてくれる。自分で立ち上がるしかないのだ。
そう自分で、決めたのだ。

「・・・スザクを怒らせてしまったな」
幾分か気持ちも落ち着いた頃、先ほど自分の動揺ぶりに叱咤していった親友を脳裏に浮かべる。
スザクは昔から表情に気持ちをすぐ表す性格をしていたが、ゲットーで再会したときはスザクは
スザクが作り出した嘘と仮面で性格を変えていた。しかし、黄昏の間でルルーシュが選んだ決別を
目にし、時の歩みを進むと決めたその場所で二人で話し合って、スザクが作り出した仮面が壊れた
ときからは、スザクは昔のスザクのようにルルーシュに接する。
「ふうん、そう思うのなら、今からでも追いかけるのだな」
C.C.が背中から体を離して、振り返る。
「・・?」
その言葉の理由に、少しだけ疑問を浮かべるルルーシュに、C.C.はこれだから、坊やは・・と
続ける。わざわざ席をはずしたのなら、考えられることは一つだろう、と。
「お前の騎士なら、坊やを私に預けて、行ってしまったからな。今頃どの女のところにいるのか」
「なっ!!」
ルルーシュは言われた内容に目を白黒させる。なにしろ、スザクと行動を共にするようになって
からずっとルルーシュは、スザクに女などとそんな気配など一度も感じたことがないのだ。だが、
自分はC.C.の言うように色恋に疎い。
「・・スザクは、そんなこと・・」
「ふん、甘いな。お前には私という共犯者がいるだろう。あの男だとてお前の知らない時間もある
だろうさ。男なら少しくらいの浮気は見逃・・」
C.C.が最後まで言葉を続ける前に、ルルーシュは駆け出していた。
(そんなの、許せるわけあるかっ!)
声には出さずに、ルルーシュは怒りに身を任せて部屋を飛び出すのだった。
「だからお前は甘いというんだ、ルルーシュ・・・」
ひとりになった部屋でのC.C.は、ベッドに身を投げ出す。ポツリとつぶやいた言葉は、だれに
聞かれるものでもなかった。
枢木スザクがどれだけルルーシュに執着しているのか目の当たりにしているC.C.は、スザクが
浮気などするはずもない事は分かっているが、ルルーシュは、いまだ動揺が続いているのか、
ほんの気まぐれで言ってみた言葉にすら心を揺らす。しかし、そんなルルーシュだからこそ、
自分はついてこうと思っているのだとC.C.は自嘲してから、目を閉じた。
きっと、今日はこの部屋にルルーシュは帰ってくることはないだろう。

***

ドッグにも、整備室にもいないスザクを探して船内を駆け回って、ルルーシュがスザクを発見したのは、
自分の部屋を飛び出してから十数分後だった。もとよりこの船内には一部の人間を除いて、
すべてがルルーシュのギアスで皇帝に忠実な奴隷と化している。
ルルーシュが少しばかり珍しく血相を変えて走っていても、気に留めない。
「スザクっ」
ルルーシュがスザクを見つけたのは、船内に取り付けられたシャワールームだった。
水のながれる音が止まり、中から、お湯を滴らせたままスザクが顔を出す。
「ルルーシュ?」
「・・スザク、お前!今までなにをしていた?」
きょとん、とした表情をしたスザクは、正直にランスロット・アルビオンの整備の後、
汗を流すためにここに来たと告げる。
「ルルーシュこそ、もう落ち着いたようだけど、というかなにか怒ってる・・・?」
「・・・っ!」
スザクの言葉に、自分がC.C.に踊らされただけだと気がつき、ルルーシュは顔を赤らめる。
「なんでもない、・・・邪魔をしたな」
ごまかして、きびすを返そうとしたルルーシュを後ろからスザクは抱きとめた。
「ね、ルルーシュ。約束、忘れてない?」
約束。
それは、黄昏の間で決めた二人だけの新たな約束。
「別に、嘘をついているわけでない。」
ぷいっと横を向いて視線を合わせようとしないルルーシュに、スザクは薄く笑った。
「ふうん、じゃあ、中々口を割らないこっちじゃなくて、体に聞こうかな」
言いながら、シャワーブースへとルルーシュを引き込む。
片手でルルーシュを押さえ込み、もう片手でシャワーコックをひねる。いきなりふってきたお湯に
ルルーシュはあわてて逃れようとするが、スザクに捕らえられていて、動けなかった。
「やめろ。馬鹿っ服が濡れるっ」
「服なんて・・・。でも、そのままじゃ気持ち悪いか。恐れながらお手伝いいたしましょう、陛下」
「・・スザ・・」
こんなときに、そんな呼び方をして楽しそうに笑うスザクを心底悔しそうに見ながらも、
体力も瞬発力も持久力も到底及ばない相手にルルーシュは抵抗を諦める。
ルルーシュの抵抗がなかったため、あっさりと服を脱がしたスザクは、服だけ外に投げ出した。
そして、一糸まとわぬ姿のルルーシュを改めて自分の胸へと抱きとめた。
「おい、・・・スザク」
「陛下、覚悟していてください。今日は体の隅々まで洗って差し上げますから」

***


結局、シャワーブースで散々ルルーシュを弄り回し、
約束どおりルルーシュから真実を聞き出したスザクはルルーシュが自分にヤキモチを妬いたのだと
わかって、さらに執拗にルルーシュを愛した。

数日もしないで、また大きな戦いが待っていることは分かっていたけれど、
今だけは、この大事な人を自分の腕の中だけに抱きしめていられる幸福を感じるのだった。


FIN.


23話は、戦いがメインでしたが、色々妄想できそうなところがいっぱいで嬉しかったです。
今回は、そんなひとつの妄想から。
21話の時に書いた無題となんとなく、繋がってるようなそうでないようなのをかきたくなって。
9月とか10月の原稿あるのに、何やってるんだ!私!!!
ここ数回、ホント、幸せな気持ちで見られて嬉しい〜ですvv
22話のエグゼリカ庭園あたりの妄想もそのうち書きたいなー。
あ・・でも、さすがにオフの原稿済んでからにしますが(^^;