21話あと・・・・


全世界に新しき皇帝の名を告げて、そして新しき騎士の名を告げ数時間後。

ルルーシュは皇帝のために用意されている部屋に入った。直前まで、皇帝としてあらゆる命令系統に指示を出していたが、この部屋まで入る事を許したのは、新皇帝にとって心置きなく話せる存在、C.C.と、自身の唯一の騎士である枢木スザクだけであった。なので、この部屋へと入った今、ルルーシュは今までかぶっていた皇帝と言う仮面を外した。
「オツカレ、ボウヤ」
気を使うものがいないので気ままにルルーシュがソファーへ身を預けると、既に先に部屋へ入っていたC.C.がチーズ君を抱えたまま反対側のソファーに寝そべっていた半身を少しだけ起こす。
「それにしても、なぜ皇帝であるお前が制服姿に?」
少しだけ疑問に思っていたのだろう、C.C.が聞くとルルーシュは微笑した。
「この服にした方が、今後の事を考えると都合が良かったのさ。まあミレイには悪い事をしたが。だが、お前こそなぜその服に戻した?」
ルルーシュが着ていた制服。見るものが見れば、すぐにその制服はアッシュフォード学園の制服だと気が付くだろう。今頃、遠く離れたエリア11の学園内では騒ぎが起こっているかもしれない。
そしてC.C.が着ている服も一年以上前に愛用していた拘束服なのだ。
「ふ・・別にいいだろう?」
「相変わらず、俺には教える気はないか?わがままな女だな」
「ああ。私はC.C.だからな」
ルルーシュの言葉にC.C.は楽しそうに微笑む。
ルルーシュもいつものことであったので、放っておいたが、そんな二人の親密な会話に、部屋にいるもう一人の人物は自分の主人であるルルーシュへとソファーの後ろから手を伸ばす。
「ルルーシュ、おつかれさま」
言いながら、スザクはルルーシュの髪に小さなキスをする。
ルルーシュは、自分の前へと伸ばされた手に自分の手を重ねた。
この手は、今は自分を守るためにある手だ。ルルーシュは、改めてスザクと共にいる今を感じる。
「なんだ、ヤキモチか?」
ルルーシュには優しくキスをしつつもスザクの視線は冷たくC.C.へと向けられていて、反対側にいたC.C.は苦笑した。この一か月という間、枢木スザクと言う男がどれだけルルーシュに執着しているのかまざまざと見せられていたのでこの後何を言われるのかも何となく想像が付いてしまう。
「分かってると思うけど、これからのルルーシュの時間は、僕のものだよ」
また数時間後には会議やら、この状況をよく思わない勢力との戦いになる。そうしたら、しばらくルルーシュを独占できる時間はなくなってしまうのだ。
「ふっ・・せいぜい皇帝の声を嗄らさないようにな」
皆までいわせずに、C.C.は隣室へと続く扉へと向かった。
C.C.としては別に、二人に目の前でことにおよばれても平気だったのだが、ルルーシュが本気でいやがった事と対照的に、スザクが、他人に見られる事をまるで気にしなかったのでからかう気も削がれたのだ。

C.C.が歩きはじめると、スザクはルルーシュの耳を甘噛みする。
「・・ス・・スザっ」
ルルーシュは、まわされた手をぎゅっと握って快感をやり過ごそうとする。
「駄目だよ・・ルルーシュ。約束だよ、二人だけの時は素直になるって」
スザクは快感を隠そうとするルルーシュをソファーの反対側から簡単に抱き上げてルルーシュの体の向きを変える。スザクが支えているとはいえ、空中でいきなり動かされたルルーシュは慌ててスザクにしがみついた。
ぎゅっと、しがみつかれた事にスザクは微笑をする。
「お前っ・・・あぶないだろう」
「心配しなくても、僕がルルーシュを落とすわけないよ」
スザクはにこりと微笑んだ。
ルルーシュはスザクのその顔を見て、しょうがないな、と言う表情になった。この一ヶ月いやと言うほど、ルルーシュの事を好きにしていたスザクが、今日はルルーシュが新皇帝であると言う発表のため、人前にでるので、その感情を抑えてくれていたのだろう。今日はスザクとルルーシュと二人だけの時間をほとんど過ごしていないのだ。

一ヶ月前、二人は今度こそ誰も邪魔をしない空間で、話し合った。
そして、お互いの行動の全てを許す事はできないと告げた。
だが同時に、かけがえのない大切な存在なのだと。
だから、二人でこの現実へと戻ってきたのだ。
シャルルやマリアンヌが求めていた「やさしい」世界は、ルルーシュやスザクの求める世界とは違っていた。過去から解放されるためにも、未来へと向かわなくてはいけないと考えた二人はこの、ルルーシュが新しい皇帝になると言う計画を実行したのだ。

ルルーシュが、新しい皇帝になると告げた時、スザクは条件を出した。
一つは、自分も共に歩くと言う事。そして、間違った方へ向かったならまず自分が直接意見をすると。
そしてもう一つは、ルルーシュとの物理的な時間。
一日のうち、半分以上は同じ場所で過ごす事。そして、二人だけの時は、お互いが「嘘」をつかなくてすむように素直に思ったことを言う事。
良くなるための「嘘」も在るけれど、本当の心が分からない時の「嘘」は心を痛めるだけだから、今度こそ二人が向かう方向を変えてしまわないように、できる限りの時間を共に過ごすこと。


奥の寝室にて二人だけの時を過ごしたスザクは、隣で気を失って眠ってしまったルルーシュへと手を伸ばす。ルルーシュの目尻に浮かぶ涙をそっと拭う。
あの空間での出来事は一ヶ月経った今でもルルーシュを悪夢へと誘うようだ。時折、夢を見ては涙している。今は、先ほどの行為によるもので生理的な涙なのだろう。その表情は穏やかで、スザクはあどけない寝姿を見せるルルーシュに微笑みを浮かべた。
あの不思議な空間の中で、ルルーシュは再度親に棄てられた。父親である皇帝と、母親であるマリアンヌに。ルルーシュは、以前から父親の事は憎んでいたけれど、母親であるマリアンヌの事はとても愛していたのに、ルルーシュの望んだ愛情をもっていなかった二人。
そして、自ら親との決別を選んだ。
ルルーシュが世界で一番愛したナナリーももういない。
スザクが殺してしまったのだから。
ギアスにかかっていたから、というのは、理由にならない。他の方法をとらずに、ナナリーがいる政庁にむけてフレイアを撃った事はかわらないのだ。
ユーフェミアにかけてしまったギアスの事をもう一度聞いても、ルルーシュは真実を答えてはくれないだろう。
ならば今度こそ、全てを見届けようと思う。
親と決別したルルーシュ。
新皇帝になったルルーシュ。
彼が何を思い、何をするのか、一生傍で。
そして、できる事なら・・・

意識の無いルルーシュへとスザクは小さな声で告げる。
「ルルーシュ。今度こそ俺は間違えないから・・・」
また数時間後には、ルルーシュは皇帝としての仮面をかぶってしまう。だからそれまでは真実の彼を見ていられる今この瞬間を大切にしよう。


そして、できる事なら、いつかルルーシュや自分を含めた皆が心から笑える「優しい」世界になりますように。


FIN.


21話!!21話みましたか????
スザルルスキーさんにとっての春がきた!!!と、大興奮でございますっ
正直、次の回とかで凹みたくないんですが、まあそこはそれ、今はフィーバーな気持ちのまま、R2になる前からずっと氷河期だったスザルルが公式的に春を迎えた事を純粋に喜びます。
ギャー今週、うかれて仕事ができなくなったらどうしてくれるって感じです。

久しぶりに、SSかいちゃいました(^^)少しでも楽しんで下さるとうれしっす。